2014年6月16日

クラス(class) vs 構造体(struct)

.NET の型は、クラス(class/Class)構造体(struct/Structure)の2つに大きく分けられる。

クラスは参照型とも呼ばれ、その変数はデータがあるメモリへのアドレス(参照)を保持している。
構造体は値型とも呼ばれ、その変数はデータを直接保持している。
クラスのデータが置かれる場所をヒープ、構造体のデータが置かれる場所をスタックと呼ぶ。

クラスと構造体は両方ともデータとメソッドを持てるので、慣れないうちはどちらを使えばいいか迷うと思う。
とりあえず、使い分けの基準になりそうな違いを挙げる。
  1. 代入(引数への値渡し)時と、ボックス化&ボックス化解除(キャスト)時、構造体はデータをコピーする
    クラスはアドレスのコピーのみ
    ※ 構造体のサイズが大きいほど、代入のコストは大きくなる
  2. 構造体は null にならない
    ※ null とはクラス変数がデータ(参照先)を持ってないことを表すアドレス
  3. インスタンス作成(new)の速度は、クラスより構造体の方が速い
  4. 構造体は GC の対象にならない (スコープから外れた時点で、自動的に消える)
  5. 構造体は他の構造体やクラスから継承できず、継承元にもならない (ただし、インターフェースは実装可能)

補足

  1. についてコードで説明

class ElementC
{
    public ElementC(int value) { Value = value; }
    public int Value;
}
struct ElementS
{
    public ElementS(int value) { Value = value; }
    public int Value;
}
static class Program
{
    static void Main(string[] args)
    {
        /* クラス変数の代入 */
        var ec = new ElementC(1);
        Console.WriteLine(ec.Value);  // 1
        var ec_ = ec; /* クラスの代入はアドレスのコピー */
        ec_.Value = 2; /* 同じデータを指しているので ec_ を変更すると ec も変わる */
        /* 結果 */
        Console.WriteLine(ec_.Value); // 2
        Console.WriteLine(ec.Value);  // 2

        /* 構造体変数の代入 */
        var es = new ElementS(10);
        Console.WriteLine(es.Value);  // 10
        var es_ = es; /* 構造体の代入はデータのコピー */
        es_.Value = 20; /* コピーなので es_ を変更しても es には変わらない */
        /* 結果 */
        Console.WriteLine(es_.Value); // 20
        Console.WriteLine(es.Value);  // 10
    }
}
引数の値渡しも代入と同様。「=」が無いため、意識しにくいかも。
List<T> 使用時の間違い易いパターン。

/* ElementC, ElementS の定義は上と同じ */
static class Program
{
    static void Main(string[] args)
    {
        /* クラス変数の値渡し */
        var ecs = new List<ElementC>();
        var ec = new ElementC(1);
        ecs.Add(ec); /* アドレスのコピー */
        Console.WriteLine(ecs[0].Value); // 1
        ec.Value = 2; /* ec を変更すると ecs[0] も変わる */
        /* 結果 */
        Console.WriteLine(ec.Value);     // 2
        Console.WriteLine(ecs[0].Value); // 2

        /* 構造体変数の値渡し */
        var ess = new List<ElementS>();
        var es = new ElementS(10);
        ess.Add(es); /* データのコピー */
        Console.WriteLine(ess[0].Value); // 10
        es.Value = 20; /* es を変更しても ess[0] は変わらない*/
        /* 結果 */
        Console.WriteLine(es.Value);     // 20
        Console.WriteLine(ess[0].Value); // 10
    }
}

  1. について
例外的な構造体として、Nullable<T> が存在するが、これは本当に null になるわけではない。
Nullable<T> は下記のように定義されてる。

public struct Nullable<T> where T : struct
{
    private bool hasValue;
    internal T value;
    /* 以降、省略 */
}
Nullable<T> が null を代入できたり、null と比較できたりするのは、コンパイラが該当する処理に置き換えているためである。
つまり、シンタックスシュガーになっている。

その他の違い

下記が分かり易くまとめられてる。

おまけ

unsafe を使えば、構造体のアドレスを取得できる。
ちょっと反則っぽいが・・・

/* ElementS の定義は上と同じ */
static class Program
{
    static void Main(string[] args)
    {
        var es = new ElementS(10);
        Console.WriteLine(es.Value);  // 10
        unsafe {
            var esp = &es;   /* es のアドレス取得 */
            esp->Value = 30; /* esp の参照先を変更すると、es も変わる */
            Console.WriteLine(esp->Value); // 30
        }
        Console.WriteLine(es.Value); // 30
    }
}

ちなみに、es を object 変数に代入し、その変数を ElementS でキャストして Value を変更するとかはできない。
コンパイルエラーになる。(コンパイラ エラー CS0445

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